クラブで遊んでいたらマルチ商法に勧誘された話
当時二十歳だった俺は地元にある無料で入れるクラブによく遊びに行っていた
そこは週末になると大賑わい、活気があった
当時専門学校を卒業して、バイト暮らしで生活カツカツだった俺には
無料で遊べて、女の子も来て、たまに酒も奢ってもらえて最高の場所だった
これは、ある日の週末クラブに行った時の話
いつもにしては、人も少なく若干暇していた時に声をかけてきた男がいた
ちょっとイケメンで背は普通、大きめのMA1を着ている男
これからはイケMと呼ぶ
最近クラブで見かけるようになった男
暇そうにしている俺にイケMは話しかけてきた
話をしていた感じ悪い人じゃなかった
だから、俺はベラベラ喋ってしまった
今バイト暮らしで金銭的に生活がキツイことを話すと
『明日、企業説明会あるけど来るー?』と誘われた
キギョウセツメイカイ?ってなんだ
聞いたことあるぞ
ああ、あれか!企業が集まって各ブースで仕事紹介してくれるやつか!!
俺はラッキーだと思った
行ったことないけど、就職先がもしかしたら見つかるかもしれない
それに今話しているイケMなんか企業側っぽいな
イケMブースで職業紹介してくれる側に違いない、仲良くしておこう!
あわよくば、イケMの会社に就職できるかもな!よっしゃ!行ったれ!
『行きます!!!』
こうして、明日の企業説明会に参加を決め
期待に胸を躍らせた
就職したら親も喜ぶだろう
明日は人生最大のチャンスだ!準備しておこう
今の内に明日の事をイケMに聞こう
『明日スーツ着てった方が良いですか?』
結局そんな馬鹿な質問しか出来なかった
俺は明日の為クラブを早めに切り上げ
家で明日の準備をして、早めに寝た
翌日
結局俺はスーツを着ていかなかった
会場近くに10分前に到着しイケM に連絡
近くにいるから合流して行く事になった
合流するとスーツの男が2人
イケMと、気弱そうな細身男
『おはよー!!』と元気なイケMと、軽い会釈をしてきた細身男
この2人の関係性は謎だったので聞いてみると
俺と同じようにクラブで出会ったみたいな感じだった
へー、イケM底辺に仕事を紹介してくれる優しいやつなんだなって思った
ていうか、イケMまだ何でここにいんの?
『イケMが企業側の人間だったら、企業側ブースで準備しているよな』と疑問が出てきた
そうして会場側に歩き出す
イケM
『今日マジでスゴイ人来てて、勉強になるよ!今日来れたの本当ラッキーだよ!!』
『ノート・ペン持ってきた!?』
俺『はい!』
イケMも学ぶ側で企業側じゃないんかい!と思いつつ会場に到着
展示会に使われそうな白くて大きな建物
その建物の中に入り、学校の教室のような部屋の前にいくと
教室入り口付近に受付があった
入り口受付で名前を書き、
中に入ろうとすると止められた
『500円です!!』
はぁぁあぁ!聞いてないんすけど!!金取られんの!!?
普通こういうのって逆になんかもらえるんじゃねーの?
てか、500円もあったか?
小銭しかなかった
なんとか500円以上はあった
金無い俺は500円払うことさえ、ためらいがあった
が流石にここまで来てチャンスを逃すわけにはいかない
泣く泣く500円を払い入場、指定の席に座った
中は学校の教室のようで
教室正面には大きいホワイトボードがあり、
ホワイトボード前、中心の机にはプロジェクターがある
教室は30人くらい、いたと思う
来ている人達の系統は様々で、インキャ・ヤンキー・爺さん・インテリ系全てのジャンルの人間達が揃っていた
なんなんだこの空間は、、
と圧倒されつつ周りを観察した
イケMと細身それぞれ離れた場所に座っていた
企業説明会ってこんな感じなんだ!と思いつつ、ノートペンを出し
よーし!今日は就職にこぎつける為頑張るぞ!と準備して待った
『じゃあこれから企業説明会を始めていきます!』と司会の進行が始まり
司会に紹介されたゲストが呼び込まれた
高身長でバチッとスーツを着こなし、いかにも仕事できますって感じのオーラが出ている30代後半の男が教室に入ってきた
『どうも、ご紹介に与りました〇〇です』
話が始まり、自分の過去のこと、経歴をざっくり話した後
話は、仕事の話に移る
- 会社員はこのままだと、やばい
- サイドビジネスで収入を増やす
- 会社員の給料は全然上がらない
- 10年自分より働いている、先輩社員を見て、どうか?給料は?働き方は?あなたは10年後そうなりたいだろうか?
- 自由な働き方で頑張った分だけ、お金が入ってくる仕組み
- 好きな時に空いた時間で頑張ってお金を手にしよう
- 不労所得・権利収入最高
といった具合にどんどん話は進み
どうやら日本はやばいんだな!とだからサイドビジネスを持つことが大事なのね
と俺はふむふむ!と真剣にメモを取っていた
周りを見渡すと
メガネ女インキャは、
話に頷きすぎて、首取れちゃうよ?ってくらい首を縦振りしていた
ヤンキーは
『スゲー!!マジやべー!!俺もこうなりてー卍』って周りと話していた
離れた席のイケMは、
トロンとした目で話す男を見ていた
お前抱かれるんか
みんなこの空間に酔っていた
頑張ればこの男のように成功できる
やってやるぞーって気持ちが周りに充満し始めたとこで
休憩の時間になった
ゲストの男は確かに喋りが上手い、皆んなこいつの話に引き込まれている
洗脳されているってこんな感じなのかなあって思った
なんか気持ち悪いな
そんな思いが出始めた
イケMが隣にやってきた
イケM『やばいでしょ!?』
俺『やばいすね!』
イケM『これから、もっとやばくなるから!』
と期待を煽ってきた
その後講義が始まり
ゲストの男は先ほどよりも、もっと熱くそして力強く話をし始めた
横文字が増え、難しい言葉も増えてきた
この講義について行く為に俺のメモの速度も加速していく!
『意地でもついていく、俺は就職してやるんだ!!』
そんな思いで必死にメモをして、ノートは何ページかになった
俺の思いはそろそろ報われるかも、そんな気持ちになってきたところ
ゲストの男が『こちらをご覧ください』と
プロジェクターで映した映像を指差す
そこに映し出されたのは『三角形』
いや違うな、なんだろ?ああピラミッドか!
え?
俺はそこで気づく
このピラミッドは階級を表す為に使うやつだ
そして階級ごとに謎の横文字の名前が振られている
これはなんだが見たことがある
なんだっけ?
、、、
、、、
、、、
マ・ル・チ じゃねーか
びっちりに書かれたノート
払った500円
昨日もうちょっと居たかったのに、今日の為早く帰ったクラブ
怒りが込み上げてくる
『ちくしょー!何で早く気づかなかったんだ』
虚しさと後悔
『帰ろう』
そう決めた
そして今更気づいた
『キ』業説明会じゃなくて、『ジ』業説明会って言っていることに
事業説明会って言っていたのね
俺は馬鹿すぎた
ゲスト男の話は続いている
契約の話までどうやら進んだようだ
ここでマルチ入会できるみたいだ
俺はもう全ての気力を無くし、抜け殻となっていた
そして休憩になり
俺は帰る事にした
イケMに伝えるとイケMは俺が帰ることにキレていた
イケM『なんで帰んの?』
俺『バイトあるんで』
イケM『別に休めばいいじゃん、こんな良い話滅多に聞けないよ』
俺『今日は無理です!』
イケM『あっそ』
明らかにキレた態度でいたが俺は振り切って帰った
いやーなんとか入会は回避できた
今頃イケMと一緒にいた細身男はカモになっている事だろう
集団洗脳みたいな場所に居たら、契約しないと雰囲気的に帰れなくなってただろう
まあひとまず、安心した
その夜イケMから連絡がきたが当然無視した
『次いつ会える?』
こいつ気持ち悪いい
こうしてマルチ入会を回避した後日
いつものようにクラブに行くとイケMがいた
俺を避けるように距離を取っていた
イケMはいかにもイケてない男に話しかけていた
『こいつ、やってんなー!』と思ったが
まあ俺には関係ねえなと思い、酒を飲んだ
彼はその後もクラブにちょいちょい顔出していたが、気付いたら来なくなった
彼が元気にしているのかは、わからない
来なくなる最後の方は、彼はどんどん、みすぼらしくなっていった
このクラブにもうカモは居ないのだろう
多分彼は今もどこかのクラブでマルチ勧誘をしているに違いない
今日はそんな感じで終わり!!
ではまた!!
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